2024年6月に成立した「子ども・子育て支援法」の改正により、「子ども・子育て支援金」という新たな財源制度が導入されることが決定しました。この制度は、少子化対策の強化を目的に設けられたものですが、一部では「独身税」と呼ばれ、議論を呼んでいます。
その理由は、この支援金の負担が子育て世帯以外にも課される一方で、直接の恩恵を享受できない層が存在するためです。本記事では、支援金制度の概要とその影響、そして賛否を整理します。
「子ども・子育て支援金」とは?
「子ども・子育て支援金」は、少子化対策の財源確保のために2026年度から導入される制度で、公的医療保険に上乗せして国民や企業から徴収されます。この支援金を通じて、育児支援の安定した財源を確保し、以下のような少子化対策を推進することが目的です。
少子化対策の主要な施策
- 児童手当の拡充
- 所得制限を撤廃(2024年12月支給分から)
- 対象年齢を18歳まで拡大
- 第3子以降の支給額を月額3万円に増額
- 児童扶養手当の強化
- ひとり親世帯への支援強化
- 子どもが3人以上いる世帯への加算部分の増額
- 妊娠・出産時の支援
- 妊娠・出産時に10万円相当の給付を実施
- 子どもが1歳になるまでの間、国民年金保険料を免除
- 「こども誰でも通園制度」の導入
- 親が働いていなくても、3歳未満の子どもを保育所などに預けられる新制度
- 育児休業給付の拡充
- 両親が14日以上の育児休業を取得した場合、最長28日間まで育児休業給付を拡充
- 給付を増額し、実質的に手取り収入の減少を防止
- 新たな時短勤務支援
- 2歳未満の子どもの親が時短勤務をする場合、賃金の10%を支給する新制度を創設
政府は、2030年までを「少子化対策のラストチャンス」と位置付け、これらの施策を着実に推進したい考えです。
支援金の負担額
「子ども・子育て支援金」は、公的医療保険の加入者全員が対象となります。会社員として社会保険に加入している人だけでなく、フリーランスや自営業者で国民健康保険に加入している人、さらには後期高齢者医療制度に加入する人も対象です。
一人当たりの負担額(見込額)
全医療保険制度の加入者における平均負担額は、以下のように年度ごとに増加する予定です。
- 2026年度:月額250円
- 2027年度:月額350円
- 2028年度以降:月額450円
※保険料は労使折半が原則となっており、企業も同額を負担する必要があります。
「独身税」と呼ばれる理由
「子ども・子育て支援金」は、少子化対策の財源として重要ですが、子育て世帯以外には直接のメリットが少ないため、「独身税」と揶揄されています。特に、以下の点が議論の焦点となっています。
- 独身者や子どもがいない世帯も負担を求められる。
- 支援金の使途が主に育児支援であるため、非子育て世帯には恩恵が感じられにくい。
これにより、若年層や独身者からの反発が予想され、支援金制度の公平性が課題となっています。
財源確保と今後の課題
政府は、少子化対策に年間3兆6,000億円の財源が必要と見積もっており、その一部を支援金で賄います。しかし、当面は国債での補填を行い、2028年度までに安定的な財源を確保する計画です。
財源の内訳は以下の通りです。
- 既存予算の活用:1兆5,000億円
- 歳出改革:1兆1,000億円
- 子ども・子育て支援金:1兆円
一方、支援金制度を巡っては、負担と恩恵のバランスを巡る批判が続いており、適切な見直しを求める付帯決議が衆参両院で可決されています。
まとめ
「子ども・子育て支援金」は、少子化問題への対応として不可欠な施策ですが、負担の公平性が問われ、「独身税」として批判される可能性もあります。政府は、2026年度からの施行に向け、国民の理解を得つつ、制度の透明性と運用の適正化を進めていく必要があります。
2030年という「ラストチャンス」を前に、少子化対策がどのような成果をもたらし、支援金制度が社会全体にどのような影響を与えるのか、今後の動向が注目されます。