会社にお金を貸している社長が亡くなった場合、その貸付金は相続財産に含まれ、相続税の課税対象となります。
相続税を計算する際、貸付金は原則として額面で評価することになりますので、多額の貸付金を有している場合には、生前に対策が必要です。
その対策の一つして考えられるのが「債権放棄」です。
社長が貸付金を債権放棄すると、貸付金は消滅しますので相続財産は減少します。
ただし、ここで注意しないといけないのが、
① 債務免除を受けた法人側では「債務免除益」が計上される
② 「みなし贈与」が発生するケースがある
という点です。
①については、法人側に債務免除益を吸収できるだけの繰越欠損金があれば、法人税の負担は生じません。
②については、社長本人が会社の株式を100%保有している場合には問題は生じません。
問題となるのは、「同族会社で社長以外の株主がいる場合」かつ「債務免除により株価が上昇する場合」の両方を満たすケースです。
債務免除を受けるとその会社の負債が減少し、純資産が増加します。それでもまだ債務超過である場合には問題となりませんが、純資産がプラスに転じるような場合には、相続税基本通達9-2の規定により、債権放棄をした社長からその他の株主に株価の増加分相当の贈与があったものとみなされ、贈与税が課税されてしまいます。
相続対策で役員借入金を債権放棄する際には、「債務免除を受ける法人側での課税関係」及び「株主側での課税関係」を考慮する必要がありますので、実行する前に税理士等の専門家にご相談されることをお勧めします。