令和6年度税制改正大綱のポイント~子育て支援~

今回の税制改正では、子育て世帯と若者夫婦世帯(子育て世帯等)に対する更なる優遇措置が盛り込まれました。
※子育て世帯等とは、「19歳未満の子を有する世帯」又は「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」を言います。

住宅ローン減税

住宅ローン減税については、2024年の入居分から減税の対象となる借入額の上限が引き下げられますが、子育て世帯等については上限の引き下げを見送り、2024年については現在の水準が維持されます。

出典:国土交通省「令和6年度国土交通省税制改正概要」

住宅リフォーム税制

子育て世帯等が子育てに対応した住宅へのリフォームを行う場合に、標準的な工事費用相当額の10%等を所得税から控除する措置が設けられます。

子育てに対応した住宅へのリフォームとは、以下のような工事で50万円を超えるものが該当します。
①住宅内での子供の事故を防止する工事
②対面式キッチンへの交換工事
③開口部の防犯性を高める工事
④収納設備を増設する工事
⑤開口部、界壁、床の防音性を高める工事
⑥間取り変更工事

出典:国土交通省「令和6年度国土交通省税制改正概要」

所得控除等の見直し(令和7年度税制改正で決定見込み)

児童手当の拡充(所得制限の撤廃と支給対象の拡大)に合わせて、扶養控除、ひとり親控除、生命保険料控除の見直しが図られる予定です。

※ 本内容は、2024年度(令和6年度)税制改正大綱及び関連省庁の公表資料に基づいています。
今後の法令等により内容が変わる可能性がございますので、ご注意ください。

3,000万円特別控除と住宅ローン控除

自宅を買い替えて譲渡益が出た場合には、3,000万円特別控除(措法35)の適用を受けることにより、課税所得を減らすことができます。

ただし、3,000万円特別控除と住宅ローン控除は同時に適用を受けることができませんので、買い替えをする場合にはどちらの適用を受けるのが有利かを考える必要があります。

居住用財産を譲渡した場合の特別控除の特例(措法35)

個人がマイホーム(居住用財産)を売却したときは、一定の要件を満たすことにより、譲渡益から最高3,000万円を控除することができます。

●この特例の適用を受けるための主な要件

・自分が住んでいる家屋、または家屋とともにその敷地や借地権を売却すること

・以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること

・家屋を取り壊した場合には、次の2つの要件全てに当てはまること
①その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
①家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと

・売却した年の前年及び前々年にこの特例又はマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと

・売却した年、その前年及び前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと

・売手と買手が親子や夫婦など特別な関係でないこと

3,000万円特別控除を受けた場合の住宅ローン控除の不適用

住宅ローン控除については、入居した年、その前年又は前々年に3,000万円の特別控除の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできません。

どちらが得か?

譲渡所得に係る3000万円特別控除や住宅ローン控除の適用をお考えの方は、どちらを適用する方が節税効果があるのか、見極める必要があります。ぜひ、専門家にご相談ください。

ふるさと納税の返礼品②

ふるさと納税の返礼について、一時所得として申告が必要なる場合があることは前回お話ししました。今回は、①どのタイミングで(収入の計上時期)、②いくらを認識するか(収入金額の計算方法)についてご説明したいと思います。

①収入の計上時期

例えば、12月末ギリギリに寄附をして、翌年1月に返礼品を受け取った場合、この受け取った返礼品はいつの収入として申告すれば良いのでしょうか?

ふるさと納税をした年分の収入とするのか、それとも、返礼品を受け取った年分の収入とするのか。

その答えは、所得税基本通達36-13が参考になります。

所得税基本通達36-13 一時所得の総収入金額の収入すべき時期
一時所得の総収入金額の収入すべき時期は、その支払を受けた日によるものとする。ただし、その支払を受けるべき金額がその日前に支払者から通知されているものについては、当該通知を受けた日により、令第183条第2項《生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算》に規定する生命保険契約等に基づく一時金又は令第184条第4項《損害保険契約等に基づく満期返戻金等》に規定する損害保険契約等に基づく満期返戻金等のようなものについては、その支払を受けるべき事実が生じた日による。(平11課所4-1改正)

原則は「返礼品を受け取った日」に収入計上することとなりますが、事前に寄付先から支払いの通知がされている場合には「通知を受けた日」に収入計上することとなります。

つまり、発送の通知がなく返礼品が届いたのであればその届いた日、発送の通知がある場合にはその通知があった日に、一時所得を認識することになります。年末ギリギリに寄附をしたような場合には注意しましょう。

②収入金額の計算方法

次に、収入金額の計算方法ですが、返礼品の実際の市場価額(時価)を一時所得の収入金額として認識することになります。

時価を調べる方法としては、以下の方法があります。
・直接自治体に問い合わせ、返礼品の価格を聞く
・商品サイトに返礼品の情報や価格が記載されていないか調べる

ただし、現実問題として、上記の方法ですべての返礼品の価格を調べるのは困難を伴います。特に、後者の場合には、自分が受け取った返礼品と同じ品物だったとしても、サイトによって寄付金額や量が異なることもありますので、価格の算定を誤ってしまう危険もあります。

そのため、寄付金額の30%を返礼品の価格として計算する方法も用いられています。

返礼品の原価は寄付金額の3割以内にとどめるよう総務省から通達が出ているため、簡便的にこの計算方法によることも問題ないとされているためです。

ふるさと納税の返礼品について申告漏れを指摘される事案も多数見受けられますので、高額な寄附をした方や他に一時所得があった方などはお気を付けください。

ふるさと納税の返礼品①

所得税と住民税の節税のため、ふるさと納税をしている方も多いと思います。

ただ、あまり知られていないのが「ふるさと納税の返礼品は課税対象になる」ということです。

これを聞いて、「もらった返礼品の申告なんてしたことない」と不安に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ご安心ください。ふるさと納税の返礼品は一時所得となりますが、一時所得には50万円の特別控除がありますので、結果として税金がかからないケースがほとんどです。

ふるさと納税の返礼品は寄付金額の3割以下とされていますので、50万円を超える返礼品を受け取るためには約166万円を超える寄付が必要となるためです。

ただし、この特別控除は一時所得全体に対しての金額となりますので、返礼品以外にも一時所得がある場合には注意が必要です。

返礼品以外の一時所得には、次のようなものがあります。
・懸賞や福引の賞金品
・競馬や競輪の払戻金
・生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金等
(参考)国税庁HP No.1490 一時所得

1年間を通して受け取ったこのような金品の合計額が50万円を超える場合には、一時所得として申告が必要となります。その際には、ふるさと納税の返礼品についても一時所得として認識する必要がありますので、ご注意ください。

「どのタイミングで、いくらを認識するか」については、次回ご説明させていただきます。

児童手当拡充と扶養控除の見直し

6月13日に閣議決定された「こども未来戦略方針」の大きな柱の一つが児童手当の拡充です。

〇児童手当の拡充(2024年10月分から)
 ・高校卒業まで対象拡大
 ・所得制限撤廃
 ・第3子以降の増額

この児童手当の拡充と関連して話題となっているのが扶養控除の見直しです。

扶養控除の見直しに関しては、民主党政権下でのこども手当(現在の児童手当)創設と関連して、年少扶養親族(0~15歳)に対する扶養控除が廃止された経緯があります。また、高校の実質無償化に伴い16~18歳までの特定扶養控除の上乗せ部分も廃止されました。

児童手当が拡充されても、扶養控除が廃止されることにより、一部の子育て世帯には税負担増や手取りの減少が生じるケースもあります。今回も過去と同様に、扶養控除が廃止・減額されるのか、今後の成り行きを注視したいと思います。

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