令和8年度税制改正大綱ー中小企業(法人)に関係する主な改正点の整理ー

令和8年度税制改正大綱では、
インボイス制度導入後の実務負担や物価上昇、人手不足といった現状を踏まえ、
中小企業の経営環境に配慮した見直しが複数盛り込まれています。

本稿では、その中でも 中小企業(法人)に特に関係が深い改正項目について、
改正内容だけでなく、その背景や適用時期も含めて整理します。


① 免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置の見直し

改正の概要

インボイス制度の導入に伴い設けられている、
免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除の経過措置について、
最終的な適用期限を延長したうえで、控除割合を段階的に縮減していくこととされました。

背景

インボイス制度の影響を受けるのは、課税事業者だけでなく、
取引先に免税事業者を多く抱える中小企業や、
免税事業者自身を含む小規模な国内事業者です。

こうした事業者への配慮として、
更なる激変緩和措置を図る観点から
経過措置の見直しが行われています。

適用スケジュール

免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除については、

  • 令和8年10月から:控除割合 7割
  • 令和10年10月から:控除割合 5割
  • 令和12年10月から:控除割合 3割

と段階的に縮減され、
令和13年9月30日をもって適用が終了する予定です。

今後、取引形態の見直しや価格交渉への影響も想定されるため、
中長期的な視点での対応が求められます。


② 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の見直し

改正の概要

中小企業者等が適用できる
少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、

  • 取得価額基準を
    現行の「30万円未満」から「40万円未満」へ引き上げ

る見直しが行われます。

適用対象の留意点

この特例の適用対象となる中小企業者等のうち、
常時使用する従業員数が400人を超える法人は対象外となります。

資本金要件だけでなく、
従業員数要件にも改めて注意が必要です。

背景

設備価格の上昇により、
30万円という基準では実態に合わないケースが増えていることを踏まえ、
中小企業の設備投資を後押しする観点から見直しが行われました。

適用開始時期

  • 令和8年4月1日以後に取得する資産から適用

③ 賃上げ促進税制(給与等の支給額が増加した場合の税額控除)

改正の概要

賃上げ促進税制については、
中小企業向け措置を中心に制度が整理されます。

あわせて、これまで設けられていた
教育訓練費を増加させた場合の税額控除の上乗せ措置については、全区分で廃止されます。

背景

教育訓練費の上乗せ措置については、

  • 教育訓練費の増加額よりも
  • 税額控除額の方が大きくなるケースがある

ことが、会計検査院から指摘されていました。

こうした指摘を踏まえ、
制度の実効性と公平性の観点から、
上乗せ措置が廃止されることとなっています。

賃上げそのものを評価する制度設計へ、
よりシンプルに整理された形といえるでしょう。


④ 食事を支給したときの非課税限度額の引き上げ

改正の概要

役員・従業員に対して食事を支給した場合の
所得税の非課税限度額が、月額7,500円に引き上げられます。

背景と実務への影響

物価高騰、とりわけ食料品価格の上昇を踏まえ、
現行の非課税限度額では実態に合わなくなっていることが見直しの背景です。

社員食堂を運営している企業や、
食事手当を支給している企業にとっては、
福利厚生の充実につながる改正といえます。

賃上げが難しい局面においても、
実質的な従業員支援策として活用が検討されるでしょう。

適用開始時期

  • 令和8年分以後の所得税から適用

⑤ 償却資産税の免税点の引き上げ

改正の概要

固定資産税(償却資産)について、

  • 家屋:免税点
    30万円 → 50万円
  • 償却資産:免税点
    150万円 → 180万円

へと引き上げられます。

背景

設備価格の上昇や、小規模事業者の設備保有実態を踏まえ、
税負担の軽減を図る目的での見直しです。

少額の設備を保有する事業者にとっては、
申告・納税負担の軽減につながる改正となります。

適用開始時期

  • 令和9年度分の固定資産税から適用

おわりに

令和8年度税制改正では、
インボイス制度導入後の負担緩和、
物価上昇への対応、
中小企業の賃上げや投資を後押しする施策が随所に盛り込まれています。

制度改正の背景を理解したうえで、
自社に影響のある改正を的確に把握し、実務に反映させることが重要です。

今後も、
中小企業の実務に直結する税制改正について、
順次解説していく予定です。

個人事業者が陥りやすい「消費税の誤り」②

― 課税・非課税の判断ミスに要注意 ―

前回は、消費税の納税義務の判定や届出に関する誤りを取り上げました。
第2回となる今回は、実務上とくに誤りの多い、

「その取引は、課税か、非課税か」

という論点について解説します。

消費税は、所得税とは異なり、
取引の性質そのものによって課税・非課税が決まります。
この点の誤解が、申告誤りにつながりやすい分野です。


1.消費税が課税される取引の基本構造

消費税の課税対象となる取引は、次の 4要件すべてを満たす必要があります。

  1. 国内において行われる取引であること
  2. 事業者が事業として行う取引であること
  3. 対価を得て行う取引であること
  4. 資産の譲渡、貸付け、または役務の提供であること

この要件を満たしていても、法律上、非課税取引とされているものもあります。


2.【誤りやすい事例①】「雑所得=消費税は関係ない」という誤解

所得税で「雑所得」に該当する収入は、
消費税の課税対象にはならないと考えているケース

これは、典型的な誤りです。

消費税では、
👉 反復・継続・独立して対価を得ているか
という「事業性」が重視されます。

そのため、
所得税上は雑所得であっても、消費税では課税売上となるケースは少なくありません。


3.【誤りやすい事例②】事業用資産の売却を課税売上に含めていない

次のようなケースも少なくありません。

  • 事業で使用していた車両の売却・下取り
  • 事業用の機械・備品の処分

これらについて、

「売上ではないから、消費税は関係ない」

と考えてしまうケースです。

しかし、
事業に付随して行われる資産の売却は、
👉 課税資産の譲渡
👉 課税売上に含まれる

とされます。


4.【誤りやすい事例③】居住用アパートの「賃貸」と「売却」の混同

不動産関係は、消費税の誤りが非常に多い分野です。

  • 居住用アパートの賃貸料 → 非課税
  • 居住用アパートの売却課税

「賃貸が非課税だから、売却も非課税」という判断は誤りです。


5.【誤りやすい事例④】自宅兼アパートを売却した場合の区分漏れ

自宅と賃貸部分が一体となった建物を売却した場合、

  • 事業用(賃貸)部分 → 課税
  • 居住用(自宅)部分 → 不課税

と、合理的な基準で区分する必要があります。

建物全体を非課税として処理してしまう誤りが多いので注意が必要です。


6.【誤りやすい事例⑤】敷金から差し引いた原状回復費を非課税としている

借主退去時に、敷金から差し引いた原状回復費について、

「非課税」

と処理しているケースがあります。

しかし、
貸主が借主に代わって行う原状回復工事は、
👉 役務の提供
👉 課税対象

となります。


7.【誤りやすい事例⑥】建物を譲渡した際、固定資産税の未経過分を課税売上に含めていない

建物を売却した際に、売買代金とは別に、

  • 固定資産税
  • 都市計画税

未経過分(精算金) を、買主から受領するケースがあります。

このとき、

「固定資産税は税金なので消費税は関係ない」
「売買代金とは別なので課税売上ではない」

として、消費税の課税売上に含めていない事例も少なくありません。

正しい考え方

建物の譲渡に伴い、
当該建物に係る固定資産税等について未経過分があり、
その金額を買主から受領している場合、

👉 その金額は
👉 建物の譲渡の対価の一部
👉 課税売上に含める必要があります

名目が「固定資産税精算金」であっても、
消費税上は 建物譲渡の対価として扱われる点に注意が必要です。


まとめ|課税・非課税は「実態」で判断する

消費税の課税・非課税は、

  • 所得区分
  • 契約書の表現
  • 金銭の名目

ではなく、

取引の実態と対価性

によって判断されます。

不動産や事業用資産が関係する取引については、思い込みで処理せず、事前確認をおすすめします。

個人事業者が陥りやすい「消費税の誤り」①

― 納税義務の判定・届出関係の落とし穴 ―

個人事業者の消費税申告においては、
「そもそも課税事業者に該当するかどうか」の判定段階で誤りが生じているケースが少なくありません。

今回は、納税義務の判定や各種届出に関する”誤りやすいポイント”を中心に解説します。


1.納税義務者に該当するかの基本整理

次のいずれかに該当する場合、消費税の確定申告が必要となります。

  • 適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)である
  • 基準期間(原則2年前)の課税売上高が1,000万円を超える
  • 特定期間(前年1~6月)の課税売上高と給与等支払額がいずれも1,000万円を超える
  • 消費税課税事業者選択届出書を提出している
  • 相続があった場合の納税義務の免除の特例に該当する

この「どれか1つに該当すれば課税事業者になる」という点が、まず重要です。


2.【誤りやすい事例①】免税事業者の売上を「税抜」で判定してしまう

免税事業者だった年の売上を、
「110分の100(または108分の100)」で割り戻して課税売上高を計算しているケース

これは誤りです。

免税事業者の売上には、そもそも消費税が含まれていません。
そのため、受け取った金額の全額が課税売上高となります。

✔ 「税込・税抜」の考え方は、課税事業者になってからの話
✔ 納税義務判定では「受け取った金額そのもの」で判定


3.【誤りやすい事例②】事業用資産の売却を課税売上高に含めていない

基準期間の課税売上高を計算する際に、

  • 事業用の建物
  • 機械・設備
  • 事業用車両

などの売却代金を除外しているケースが散見されます。

これらはすべて
👉 「課税資産の譲渡」
👉 課税売上高に含める必要があります

一時的な売却であっても、判定には影響しますので注意が必要です。


4.【誤りやすい事例③】課税事業者選択届の効力を誤解している

よくある誤解

  • 「一度売上が1,000万円を超えたら、選択届の効力はなくなる」

これは誤りです。

✔ 課税事業者選択届は
👉 「不適用届出書」を提出しない限り効力は存続します


5.相続があった場合の注意点

被相続人が提出していた
「消費税課税事業者選択届出書」の効力は、相続人には及びません

相続により事業を承継した場合には、

  • 相続があった場合の納税義務の判定
  • 必要に応じて届出書の提出

が必要となります。

大阪・関西万博の入場券購入費用の税務処理:企業担当者が知っておくべきポイント

2025年4月13日から10月13日まで、大阪市の夢洲で開催される大阪・関西万博。企業がSDGsへの貢献や社会貢献をアピールする手段として、入場券の購入を検討するケースも増えています。しかし、入場券の購入費用は税務上どのように扱われるのでしょうか?法人税と消費税の処理について、企業担当者が知っておくべきポイントをまとめました。

法人税の処理:費用計上の区分と損金算入のタイミング

法人税の処理では、入場券の購入費用をどのような費用として計上できるのか、また、いつの時点で損金として算入できるのかが重要なポイントとなります。

1. 費用計上の区分

入場券の購入目的によって、計上できる費用が異なります。

  • 販売促進費・広告宣伝費
    取引先等への交付を通じて、企業イメージの向上や販売促進、広告宣伝を意図する場合に該当します。国際博覧会は、その性格上、企業のイメージアップに繋がる特別なイベントと考えられるため、このような処理が認められます。

  • 福利厚生費
    従業員の慰安やレクリエーションを目的として入場券を交付する場合に該当します。ただし、福利厚生費として計上するには、以下の要件を満たす必要があります。
    • 原則として全従業員が対象であること
    • 従業員またはその家族が使用すること(転売・譲渡の禁止)
    • 交付を希望しない従業員に対し、入場券の代わりに金銭の支給をしないこと

2. 損金算入のタイミング

損金算入の時期は、計上する費用によって異なります。

  • 販売促進費
    取引先へ入場券を交付した時点で損金算入が可能です。大阪・関西万博の開幕前であっても、交付時点で損金として処理できます。

  • 福利厚生費
    原則として、従業員が入場券を使用した時点で損金算入します。ただし、例外として、従業員に交付した時点で損金算入することも可能です。  
    ただし、交付した時点で損金算入とする場合、消費税の課税仕入れの時期とズレが生じる可能性があるため、従業員が入場券を使用した時期に損金算入とする方法を推奨します。

消費税の処理:課税仕入れのタイミングとインボイスの取り扱い

消費税の処理では、入場券の購入が課税仕入れに該当するかどうか、また、仕入税額控除の適用を受けるためのインボイスの取り扱いが重要となります。

1. 課税仕入れのタイミング

入場券は消費税法上「物品切手等」に該当するため、購入時点では課税仕入れとして処理できません。実際に物品または役務の提供を受けた者が、その提供を受けた際に課税の対象となります。

  • 販売促進費
    取引先へ交付する目的で入場券を購入した場合には、課税仕入れには該当しません。
  • 福利厚生費
    購入時や従業員等への交付時ではなく、実際に従業員等が使用した時に課税仕入れを計上し、仕入税額控除の適用を受けることとなります。そのため、購入に関するインボイスの保存と従業員等の使用状況の管理が必要となります。

2. 仕入税額控除の適用を受けるためのインボイスの取り扱い

仕入税額控除の適用を受けるには、インボイスの保存が必要です。入場券の種類によって、必要な対応が異なります。

  • 紙チケット
    旅行代理店等から交付を受けたインボイス(簡易インボイス)を保存します。
  • チケット引換券(来場日時指定あり/なし)
    以下のいずれかの方法で対応します。
    ①入場券等回収特例の適用
    チケット引換券を会場のゲート前チケット引換所でQRコード付きチケットに引き換えた場合、チケット引換券が回収されるため、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。

    ②チケット引換券の保存
    チケット引換券をスマートフォン等でチケットIDに引き換えて電子チケットを受け取った場合は、その引換券を保存します。コンビニエンスストアが発券したチケット引換券の場合には、ホームページに掲載された記載事項と併せて保存する必要があります。

    ③媒介者交付特例により発行されたインボイス(簡易インボイス)を保存
    販売元である旅行代理店等が媒介者交付特例を適用している場合、旅行代理店等の名称でインボイス(簡易インボイス)が交付されるので、それを保存します。

まとめ

大阪・関西万博の入場券購入費用の税務処理は、法人税と消費税でそれぞれ異なるルールが適用されます。適切な会計処理を行うために、この記事を参考に、購入の目的やチケットの種類に応じた処理方法を確認しておきましょう。

最近の税務調査のポイント

最近の税務調査では、消費税や海外取引、無申告者、シェアリングエコノミーといった分野に対する重点が見られます。これらの分野は国の歳入に大きく関与しているだけでなく、近年の経済・社会環境の変化に伴い、税務調査の焦点が変わってきている部分です。以下で、具体的な税務調査の注目ポイントを解説していきます。

1.消費税が主な調査対象に

2024年度の日本政府の一般会計歳入(当初予算)で約112.6兆円のうち、61.8%にあたる69.6兆円が租税及び印紙収入です。その中でも、消費税は国にとって最も大きな収入源となっており、その割合は34.2%(23.8兆円)に達します。これは、他の税目と比べて非常に高い割合であり、消費税が税務調査において重視される理由のひとつです。

消費税は事業者が消費者から預かった税金を国に納める仕組みであるため、正確な計算と適正な納税が求められます。しかし、意図的な不正や単純なミスにより、適切に消費税を申告していないケースも見受けられます。こうした背景から、税務調査の現場では消費税に関するチェックが厳しく行われる傾向があります。特に、調査官の名刺に「消費税専門官」と書かれている場合、その調査が消費税に焦点を当てたものになることはほぼ確実です。

2.海外取引に関する調査の強化

資産運用の国際化に伴い、税務当局は海外取引に対する調査にも力を入れています。特に、CRS(共通報告基準)という国際的な情報共有制度を活用して、各国の税務当局が金融情報を共有できるようになったことで、海外金融機関を通じた利益の申告漏れがより把握されやすくなっています。

例えば、海外の銀行口座に蓄積されていた多額の利息や配当金が申告されていなかったケースが、租税条約に基づく情報提供要請によって発見されることも増えています。こうした国際的な取引や金融商品の利用が増加する中、税務当局は租税回避を防止するため、より詳細かつグローバルな視点での調査を強化しているのです。

3.無申告者の把握と対策

近年、無申告者に対する税務調査も厳格化しています。特に、インフルエンサーやユーチューバーといったオンラインプラットフォームで収益を上げる人々がターゲットとなるケースが増えています。多額の利益を得ながらも、その所得を申告していないことが発覚する事例が後を絶ちません。

例えば、あるインフルエンサーが多額の広告収入を得ながら申告を怠っていたり、ペットオークションやインターネット上でのビジネスを通じて得た利益を適切に申告していないことが判明するケースもあります。また、相続税の申告が必要であると認識しながらも、税務署からの照会に「申告不要」と虚偽の回答を行うなど、意図的な無申告が問題視されています。

こうした状況に対応するため、税務当局はSNSやインターネット上のデータを活用して、無申告者の特定に努めています。今後も、この分野における調査は一層厳しくなるでしょう。

4.シェアリングエコノミーと税務調査

アフィリエイターや動画配信者といったシェアリングエコノミーに関連する事業者も、税務調査の対象となることが増えています。これらの事業者は、インターネットを介して収益を得るため、納税者の特定や情報の収集が困難なケースも存在してきたところですが、税務当局はこれに対しても着実に対応を進めています。

具体的には、アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)や動画配信プラットフォームなどに対して、税務署が照会を行い、納税者の情報を収集する手法が取られています。このようにして、インターネットを利用した新しい経済活動においても、適正な納税が行われるよう、税務当局は調査の範囲を広げています。

まとめ

このように、税務調査は社会や経済の変化に応じて進化しています。特にデジタル化・国際化が進む現代においては、より精密かつ包括的なアプローチが求められており、事業者や個人は、最新の動向を把握し、適切な対応を心がけることが重要です。

クラウドファンディングを利用する際の税務上の注意点とは?失敗しないためのポイント解説

最近、クラウドファンディングを活用して新しいビジネスやプロジェクトを始める方が増えています。特にインターネットを通じて資金を集められる便利な手段ですが、その一方で、税金の申告ミスが増えているのも事実です。今回は、クラウドファンディングを利用する際に知っておくべき税務上のポイントについて、分かりやすく解説します。

クラウドファンディングには2つのタイプがある

まず、クラウドファンディングには大きく分けて「購入型」と「寄付型」の2種類があります。

  • 購入型:支援者に対して商品やサービスなどのリターンを提供するタイプ。
  • 寄付型:リターンを必要としない、いわゆる寄付を集めるタイプです。

どちらのタイプを利用するかによって、会計処理や税金が異なりますので、しっかりと理解しておく必要があります。

資金を受け取った際の会計処理が重要

購入型クラウドファンディングの場合、支援者から資金を受け取った時点では、これは「前受金」として処理します。リターンを提供したタイミングで、その前受金を「売上高」として計上します。ここで大事なのは、リターンを提供するまでは売上として計上しないことです。

このプロセスを誤ると、税務調査で「売上計上の漏れ」と指摘される可能性があるため、正しいタイミングでの会計処理が必要です。一方、寄付型の場合は、リターンがないため、入金された時点で「受贈益」として収益計上すれば良いので比較的シンプルです。

消費税にも注意が必要

クラウドファンディングでの収益が多くなると、消費税の課税事業者になる可能性もあります。例えば、売上計上のタイミングがずれてしまうと、過去の売上が基準額を超え、消費税を納める必要が出てくることも。そのため、売上の時期をしっかり管理し、適切なタイミングで計上することが大切です。

国税当局も監視を強化している

クラウドファンディングはインターネット上で実施されるため、国税当局は容易に収益を把握できます。過去の実績や募集額はすべて公開されており、税務調査の際にもチェックされやすいです。申告ミスがあれば追徴課税や延滞税が発生するリスクもあるため、慎重に対応することが必要です。

最後に

クラウドファンディングを利用して多額の資金を調達することは魅力的ですが、税務処理は意外と複雑です。特に、初めて利用する方は思わぬミスをしてしまいがちなので、事前に税理士に相談し、正確な会計処理を行うことが重要です。

クラウドファンディングを成功させるためにも、税務の基本を押さえて、しっかりと準備しておきましょう!

国税庁「お問合せの多いご質問」

インボイス制度に関して、様々な情報が国税庁のサイトで更新されています。

その中でも、都度更新されている「お問合わせの多いご質問」が11月13日付で更新されてます。

〇お問合わせの多いご質問(令和5年11月13日更新)

上記には、Q&A公表後に多く寄せられるご質問として、追加・改定等として整理し、集約されてた13問が掲載されています。

免税事業者の交付する請求書等についてや、売手が負担する振込手数料について、従業員の立替払いについてなど、実務で発生するケースの多い事項が記載されています。

これまで記載されていなかった柔軟な対応ができるような取り扱いも掲載されていますので、実務担当者の方はご一読ください。

居住用賃貸建物に係る仕入税額控除

令和2年10⽉1⽇以後の課税仕⼊れ等から、居住⽤賃貸建物に係る仕⼊税額控除の適⽤が制限されています。

仕⼊税額控除の制限対象となる「居住⽤賃貸建物」とは、⾮課税となる住宅の貸付け (消法別表第⼀13号)の⽤に供しないことが明らかな建物以外の建物(⾼額特定資産⼜は 調整対象⾃⼰建設⾼額資産)です。

「住宅の貸付けの⽤に供しないことが明らかな建物」とは、建物の構造及び設備の状況等により住宅の貸付けの⽤に供しないことが客観的に明らかなものが該当します。( 消基通11-7-1 )。

賃貸マンション等を⺠泊サービス事業のために取得した場合、その建物は構造等から判断して住宅ですので「居住⽤賃貸建物」に該当し、仕⼊時に仕⼊税額控除を適⽤できません。

ただし、仕⼊税額控除の制限対象となっても、『調整規定の要件』をすべて満たせば、居住⽤賃 貸建物に係る課税仕⼊れ等の税額のうち⼀定額を第3年度の課税期間の仕⼊控除税額に加算することができます。( 消法35の2 ①、 消令53の2 )

●調整規定の要件
・第3年度の課税期間の末⽇に居住⽤賃貸建物を有していること
・居住⽤賃貸建物の全部⼜は⼀部を、仕⼊れ等の⽇から第3年度の課税期間の末⽇までの間(調整期間)に「課税賃貸⽤」に供すること

「課税賃貸⽤」とは、⾮課税の住宅の貸付け(消法別表第⼀13号) 以外の貸付けの⽤とされています( 消基通12-6-1 )。課税売上が発⽣する⺠泊サービス事業としての貸付けは、⾮課税の住宅の貸付けから除外されるものに当たり「課税賃貸⽤」に該当します。

したがって、民泊サービス事業のために取得した建物は、仕入時に仕入れ税額控除を適用できませんが、第3年度の課税期間の末日までの間に民泊サービス事業として貸付けを行っていれば、第3年度の課税期間の仕入税額に一定額を加算調整することができるということになります。

インボイス制度とETC料金~追加情報~

先日、インボイス制度開始後は、ETC料金のインボイス対応についてご説明しましたが、9月15日、国税庁が「お問い合わせの多い質問」を更新し、柔軟な対応を認める旨を示しましたので、その内容についてご説明したいと思います。

利用証明書は高速道路会社等ごとに任意の1回分のみでOK

「ETC利用照会サービス」に登録し、すべての利用証明書を取得するのは大変手間がかかるという声があがっていました。これを受けて、国税庁は9月15日、インボイス制度に係る「お問合せの多いご質問」を更新し、「利用証明書」のダウンロードについては、利用した高速道路会社等ごとに1回のみで済む柔軟な対応を認める旨を示しました。

なお、空港と内陸部を結ぶ連絡橋の通行料金(空港連絡橋利用税)など、消費税の課税対象とならない金額がある場合、その金額は仕入税額控除の対象外となる旨の記載されておりました。

国税庁HP お問合せの多いご質問(随時更新)

インボイス制度とETC料金

いよいよインボイス制度開始まで半月となりました。

最近、お問い合わせいただくことが多い「ETCの利用料金」について、ご紹介します。

ETCの利用料金については、これまではクレジットカードの利用明細で使用額を確認し、会計処理を行うというのが一般的な方法だったかと思います。

現行の区分記載請求書等保存方式においては、1回当たりの税込取引金額が3万円未満の少額取引の場合や自動販売機から購入する場合など、請求書等の交付を受けられなかったことについてやむを得ない理由があるときについては、帳簿の保存のみで仕入税額控除を行うことができました。(旧消法30⑦、旧消令49①)

しかし、10月からのインボイス制度開始後は、この少額取引の場合や請求書等の交付を受けることが困難な場合に請求書等の保存が不要となる制度が廃止されます。少額な公共交通機関の運賃など一部の例外を除き、例え100円の消耗品の購入であっても、インボイスの保存が必要となります。

これは、ETCの利用料金についても同様です。今後はクレジットカードの利用明細だけでは、原則、仕入税額控除を行うことができません。(クレジットカードの利用明細は、インボイスには該当しないためです)

今後は、ETCの利用料金について仕入税額控除を行うためには、「ETC利用紹介サービス」から利用証明書(これがインボイスにあたります)をダウンロードし、これを保存する必要があります。

ただし、例外もあります。

基準期間の課税売上高1億円以下の中小事業者などについては、税込1万円未満の少額取引については、帳簿の保存のみで仕入税額控除を適用することができる経過措置がありますので、当面の間は、帳簿に記載するだけで仕入税額控除が受けられます。

インボイス制度、複雑ですね。

ご心配な方は、当事務所までご相談ください。

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