インフレ税とは何か― 個人事業主が「売上は同じなのに苦しい」と感じる理由 ―

最近、「インフレ税」という言葉を目にする機会が増えました。
法律上の税金ではありませんが、実務の現場にいると、この言葉が示す感覚に強くうなずかされる場面が多くなっています。

特に個人事業主の方から、

  • 売上はそれほど変わっていない
  • むしろ名目上は増えている場合もある
  • それにもかかわらず、なぜか手元が苦しい

という声を耳にすることが増えました。

本記事では、
インフレ税とは何か
なぜ個人事業主ほど影響を受けやすいのか
そして 最近の税制改正の動きと今後の見通しについて整理します。


インフレ税とは何か(法律用語ではありません)

インフレ税とは、
物価上昇(インフレ)によって、実質的な購買力が低下することを、
「税金になぞらえて」表現した言葉です。

例えば、

  • 預金残高は変わっていない
  • 収入も名目上は同じ、あるいは増えている

にもかかわらず、

  • 食料品
  • 光熱費
  • 家賃
  • 各種サービス料金

が上昇することで、生活や事業に使える実質的な価値は減少します。
このような「静かに進む負担増」を、インフレ税と呼びます。


個人事業主がインフレ税を強く実感しやすい理由

① コストはすぐに上がるが、売上単価は簡単に上げられない

多くの個人事業主に共通する構造として、

  • 仕入
  • 外注費
  • 家賃
  • 光熱費

といった事業コストは比較的早く上昇する一方で、

  • 売上単価の値上げ
  • 報酬改定

は、取引先や顧客との関係上、簡単には行えないケースが少なくありません。

その結果、

売上はほぼ変わらない
しかしコストだけが上昇し
利益率が低下する

という状態に陥りやすくなります。


② インフレと累進課税が同時に効く構造

インフレ下では、事業者によって置かれる状況が分かれます。

価格転嫁が難しい場合には、

  • 売上は横ばい
  • 事業コストが上昇
  • 利益率が低下

という形で、実質的な負担が増加します。

一方で、物価上昇に対応するため、

  • やむを得ず売上単価や報酬を引き上げ
  • 名目上の売上や所得が増加する

ケースもあります。

しかし、この場合でも、

  • 生活費や事業コストの上昇により
  • 実質的な余裕はほとんど変わらない

にもかかわらず、課税所得の増加により、より高い税率が適用される可能性があります。

この結果、

インフレによる実質的な負担増

所得税の累進課税による税負担増

という、二重の圧迫が生じます。

これが、
「頑張っているのに、なぜか楽にならない」
と感じる大きな要因です。


税制改正大綱に見える問題意識

先日公表された令和8年度税制改正大綱の「検討事項」には、

小規模企業等に係る税制のあり方について、
個人事業主の勤労性所得に対する課税のあり方にも配慮しつつ、
人的控除を含め、総合的に検討する

といった趣旨の記載があります。

これは、

  • 個人事業主の所得が
    単なる事業リスクの対価ではなく
  • 勤労によって得られる所得という側面

についても、制度上再評価する必要がある、
という問題意識が示されたものと考えられます。

もっとも、現時点ではあくまで「検討事項」であり、
直ちに税負担が軽減される制度改正が行われると断定できる状況ではありません。


個人事業主が今、意識しておくべきこと

インフレと税制の構造がすぐに変わらない以上、
現実的には、次のような点を意識する必要があります。

  • 名目売上ではなく「実質的な手取り」で状況を把握する
  • 利益率の低下を放置しない
  • 税引後キャッシュフローを基準に判断する
  • 値上げや報酬改定を「悪いこと」と捉えすぎない

インフレ下では、
「何もしないこと」自体がリスクになる局面に入っています。


おわりに

インフレ税は、
目に見える形で請求書が届くものではありません。

しかし、
気づかないうちに、
毎年少しずつ、
確実に負担を増やしていきます。

制度を正しく理解したうえで、
ご自身の事業にどのような影響が生じているのかを把握し、
早めに対策を検討することが重要です。

令和8年度税制改正でNISAはどう変わる?子ども向け資産形成を見据えた拡充内容を解説

先日、令和8年度税制改正大綱が発表されました。
子育て世代として個人的に特に注目しているのが、NISAの拡充です。

NISA(少額投資非課税制度)は、
投資によって得られた利益に税金がかからない制度として、
これまでも国民の資産形成を後押ししてきました。

今回の税制改正では、
従来の「大人の資産形成」を主眼とした制度から一歩進み、
子どもの将来を見据えた長期的な資産形成までを、制度として明確に位置づけた点が、大きな特徴だと感じています。

本記事では、
改正前と改正後を比較しながら、NISA制度がどのように変わるのかを、
できるだけ分かりやすく整理します。


NISAとはどのような制度か

NISAとは、通常であれば約20%の税金がかかる

  • 株式や投資信託の値上がり益
  • 配当金や分配金

といった投資による利益が非課税となる制度です。

長期・積立・分散投資を促すことで、
国民一人ひとりが将来に備えた資産形成を行えるよう設計されています。


【改正前】これまでのNISAと子ども向け制度の位置づけ

令和7年度までのNISA制度は、

  • 対象年齢は原則18歳以上
  • 主に老後資金など、大人自身の将来に向けた資産形成を想定

という構成でした。

一方で、子ども向けの制度としては、
2016年に「ジュニアNISA」が創設されましたが、
2023年をもって制度として廃止されています。

その結果、
改正前のNISA制度全体としては、
子どもの将来資金を目的とした恒久的な仕組みが存在しない状態となっていました。


【改正後】令和8年度税制改正によるNISAの主な変更点

① つみたて投資枠の対象年齢を0歳まで拡充

今回の改正により、
2027年(令和9年)から、つみたて投資枠の対象年齢が0歳まで引き下げられます。

これにより、

  • 0歳からNISA口座を開設し
  • 親が管理する形で
  • 長期間にわたり積立投資を行う

ことが可能となります。

ジュニアNISA廃止後に空白となっていた「子どものための資産形成制度」が、
新たな形で制度化されたといえます。

なお、いわゆる「こどもNISA」については、以下のような上限が設けられます。

  • 年間投資枠:60万円
  • 非課税保有限度額:600万円

これは、
資産の過度な集中や格差の固定化を防ぐ観点からの措置と考えられます。

また、積み立てた資産は、
子どもが12歳以上になり、本人の同意を得なければ引き出すことができない
という制限も設けられます。

従来のジュニアNISAでは、
原則として子どもが18歳になるまで払い出しができず、
使い勝手の面で課題が指摘されていましたが、
今回の改正では、年齢に応じて柔軟性を持たせた制度設計となっています。


② 投資対象の拡充(国内投資の後押し)

改正後は、

  • 国内株式を対象とした一定の株価指数
  • 地域を限定した株式指数
  • 債券の比率が高い投資信託

などが、つみたて投資枠の対象として追加されます。

個人の資産形成を支援すると同時に、
国内経済への資金循環を促す政策的な意図も読み取れます。


改正前後の比較まとめ

項目改正前改正後
対象年齢原則18歳以上0歳以上
子ども向け制度ジュニアNISA(2023年廃止)「こどもNISA」として恒久的に位置づけ
想定される目的大人の資産形成中心子どもの将来資金も想定
投資対象一定の制限あり国内投資・債券等が拡充

子育て世代の立場から感じること

今回のNISA拡充は、

  • 「教育資金は貯金で準備するもの」
  • 「投資は大人になってから考えるもの」

といった従来の考え方から、
時間を活かした長期的な資産形成へと発想を広げる改正だと感じます。

もちろん、
投資には価格変動リスクがあり、
すべての家庭にとって必須の制度ではありません。

しかし、
制度を正しく理解した上で
「使う・使わない」を選択できる環境が整ったこと自体に、
大きな意義があると考えています。


おわりに

税制改正は専門的で分かりにくい印象を持たれがちですが、
NISAのように日常生活や子育て、将来設計に直結する改正も少なくありません。

今後も、
子育て世代・生活者の視点から、
税制改正のポイントを分かりやすく整理していきたいと思います。

個人事業者が陥りやすい「消費税の誤り」②

― 課税・非課税の判断ミスに要注意 ―

前回は、消費税の納税義務の判定や届出に関する誤りを取り上げました。
第2回となる今回は、実務上とくに誤りの多い、

「その取引は、課税か、非課税か」

という論点について解説します。

消費税は、所得税とは異なり、
取引の性質そのものによって課税・非課税が決まります。
この点の誤解が、申告誤りにつながりやすい分野です。


1.消費税が課税される取引の基本構造

消費税の課税対象となる取引は、次の 4要件すべてを満たす必要があります。

  1. 国内において行われる取引であること
  2. 事業者が事業として行う取引であること
  3. 対価を得て行う取引であること
  4. 資産の譲渡、貸付け、または役務の提供であること

この要件を満たしていても、法律上、非課税取引とされているものもあります。


2.【誤りやすい事例①】「雑所得=消費税は関係ない」という誤解

所得税で「雑所得」に該当する収入は、
消費税の課税対象にはならないと考えているケース

これは、典型的な誤りです。

消費税では、
👉 反復・継続・独立して対価を得ているか
という「事業性」が重視されます。

そのため、
所得税上は雑所得であっても、消費税では課税売上となるケースは少なくありません。


3.【誤りやすい事例②】事業用資産の売却を課税売上に含めていない

次のようなケースも少なくありません。

  • 事業で使用していた車両の売却・下取り
  • 事業用の機械・備品の処分

これらについて、

「売上ではないから、消費税は関係ない」

と考えてしまうケースです。

しかし、
事業に付随して行われる資産の売却は、
👉 課税資産の譲渡
👉 課税売上に含まれる

とされます。


4.【誤りやすい事例③】居住用アパートの「賃貸」と「売却」の混同

不動産関係は、消費税の誤りが非常に多い分野です。

  • 居住用アパートの賃貸料 → 非課税
  • 居住用アパートの売却課税

「賃貸が非課税だから、売却も非課税」という判断は誤りです。


5.【誤りやすい事例④】自宅兼アパートを売却した場合の区分漏れ

自宅と賃貸部分が一体となった建物を売却した場合、

  • 事業用(賃貸)部分 → 課税
  • 居住用(自宅)部分 → 不課税

と、合理的な基準で区分する必要があります。

建物全体を非課税として処理してしまう誤りが多いので注意が必要です。


6.【誤りやすい事例⑤】敷金から差し引いた原状回復費を非課税としている

借主退去時に、敷金から差し引いた原状回復費について、

「非課税」

と処理しているケースがあります。

しかし、
貸主が借主に代わって行う原状回復工事は、
👉 役務の提供
👉 課税対象

となります。


7.【誤りやすい事例⑥】建物を譲渡した際、固定資産税の未経過分を課税売上に含めていない

建物を売却した際に、売買代金とは別に、

  • 固定資産税
  • 都市計画税

未経過分(精算金) を、買主から受領するケースがあります。

このとき、

「固定資産税は税金なので消費税は関係ない」
「売買代金とは別なので課税売上ではない」

として、消費税の課税売上に含めていない事例も少なくありません。

正しい考え方

建物の譲渡に伴い、
当該建物に係る固定資産税等について未経過分があり、
その金額を買主から受領している場合、

👉 その金額は
👉 建物の譲渡の対価の一部
👉 課税売上に含める必要があります

名目が「固定資産税精算金」であっても、
消費税上は 建物譲渡の対価として扱われる点に注意が必要です。


まとめ|課税・非課税は「実態」で判断する

消費税の課税・非課税は、

  • 所得区分
  • 契約書の表現
  • 金銭の名目

ではなく、

取引の実態と対価性

によって判断されます。

不動産や事業用資産が関係する取引については、思い込みで処理せず、事前確認をおすすめします。

個人事業主の倒産防止共済と節税ポイント

個人事業主の皆さまにとって、所得税や住民税のほかに、毎年必ず課される個人事業税も負担になります。
iDeCoや小規模企業共済は所得税や住民税の節税に有効ですが、個人事業税には影響しません。
そこで注目されるのが、倒産防止共済(経営セーフティ共済)です。今回は、制度の仕組みと節税効果、実務上の注意点を整理してみました。


1. 倒産防止共済とは?

倒産防止共済は、中小企業や個人事業主向けの共済制度で、以下の特徴があります。

  • 掛金は毎月1万円から20万円まで設定可能
  • 掛金は全額必要経費として算入できるため、所得税・住民税・個人事業税の課税所得を減らすことができる
  • 解約時には掛金の元本が返戻される(運用益は付かない)
  • 掛金の10倍までの低利借入が可能で、資金繰りの保険的機能もある

2. 前納による節税効果のシミュレーション

ここでは仮定条件として、年間60万円を前納した場合の節税効果を試算します。

  • 前提条件
    • 掛金:60万円
    • 所得税率:10%・20%(複数パターン)
    • 住民税率:10%
    • 個人事業税率:5%

所得税10%の場合

  • 所得税:60万円 × 10% = 6万円
  • 住民税:60万円 × 10% = 6万円
  • 個人事業税:60万円 × 5% = 3万円
    合計節税額:15万円

所得税20%の場合

  • 所得税:60万円 × 20% = 12万円
  • 住民税:60万円 × 10% = 6万円
  • 個人事業税:60万円 × 5% = 3万円
    合計節税額:21万円

※あくまで仮定条件でのシミュレーションです。実際の税額は所得や控除、税率により異なります。


3. 出口戦略と注意点

倒産防止共済は掛金を経費として計上することで課税を繰り延べる仕組みです。
解約時には、解約手当金が事業所得として算入されますので、最終的な節税は「課税の先送り」にとどまります。

  • 長期保有のメリット
    収益性や流動性はないものの、赤字年や廃業時に解約すれば、節税効果を最大化できる
  • 流動性の制約
    掛金は原則として40か月以上継続しないと元本が全額戻らないため、資金は長期間拘束される

4. 実務上の考え方

  • 即効的に税金を減らしたい場合は、前納による節税が有効
  • 一方で、資金を運用して増やすことや流動性を重視する場合は、前納よりも通常掛金または投資に回す選択肢もある
  • 個人事業税まで含めた節税策としての位置づけを明確に理解することが重要

5. まとめ

倒産防止共済は、個人事業税まで節税できる数少ない制度ですが、長期的には「課税繰延」であること、運用益は付かないことを理解したうえで利用する必要があります。

  • すぐに税金を減らしたい場合 → 前納による即効節税
  • 流動性・資産形成を重視する場合 → 最低限の掛金にとどめ、残りは運用へ

個々の事業状況やライフプランに応じて、掛金の前納・通常支払・運用のバランスを検討することが望ましいでしょう。


💡 法人の場合の補足
法人が倒産防止共済に加入する場合も、解約時には解約手当金が収益として計上されますが、役員退職金などの費用と相殺することで課税所得の調整が可能です。そのため、法人の場合は個人事業主のような課税繰延のデメリットを抑えつつ、節税や資金繰り対策として有効に活用できるため、加入はおすすめです。

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退職金の受け取り方と税負担の違い

退職金は受け取り方法によって、税負担が大きく変わることをご存じですか?受け取り方法は一般的に以下の3つに分類されます。

  1. 一括受け取り(退職一時金)
  2. 年金形式での分割受け取り(退職年金)
  3. 一括受け取りと年金の併用

各方法にはメリットとデメリットがあり、ご自身のライフプランや税負担を考慮して選ぶことが重要です。


退職一時金の特徴

メリット

  • 税負担が軽減される
    退職金を一括で受け取る場合、退職所得として税制上の優遇措置が適用されます。
     退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2
    勤続年数に応じて退職所得控除額が増えるため、長期間勤務していた場合、税負担が大幅に軽減される可能性があります。

デメリット

  • 総受取額が少なくなることがある
    年金形式に比べて運用益が発生しないため、総受取額が少なくなる場合があります。

退職年金の特徴

メリット

  • 運用益の上乗せ
    金融機関による運用益が期待できるため、総受取額が増える可能性があります。

デメリット

  • 税負担が増加する場合がある
    年金形式で受け取る退職金は雑所得として扱われます。他の収入と合算されるため、税金や社会保険料が高くなるリスクがあります。

選択のポイント

  1. 老後の働き方を考慮する
    • 定年後に再就職などで働き続けることを予定している場合、一括受け取りの方が税負担を抑えやすいです。
    • 働かない場合は、年金形式で受け取る場合でも所得がそれほど増えないため、年金で受け取る選択肢も検討できます。
  2. 公的年金との併用を検討する
    • 公的年金の繰り下げ受給制度を活用することで、税負担を軽減しながら将来の年金額を増やすことができます。
  3. 一括受け取り後の資産運用を計画する
    • 一括受け取った退職金をNISAなどの税制優遇制度を利用して運用することで、長期的な資産形成を図る方法もあります。

まとめ

  • 退職一時金
    • メリット: 税制上の優遇あり
    • デメリット: 計画性がないと浪費のリスク
  • 退職年金
    • メリット: 受取総額が多くなる可能性あり
    • デメリット: 税負担や社会保険料が高くなる可能性

退職金は老後の生活設計に直結する大切な財産です。ご自身の働き方やライフスタイルに応じた最適な方法を選び、税負担を抑えるための工夫を忘れないようにしましょう。

「独身税」!?子ども・子育て支援金制度がもたらす影響とは

2024年6月に成立した「子ども・子育て支援法」の改正により、「子ども・子育て支援金」という新たな財源制度が導入されることが決定しました。この制度は、少子化対策の強化を目的に設けられたものですが、一部では「独身税」と呼ばれ、議論を呼んでいます。
その理由は、この支援金の負担が子育て世帯以外にも課される一方で、直接の恩恵を享受できない層が存在するためです。本記事では、支援金制度の概要とその影響、そして賛否を整理します。

「子ども・子育て支援金」とは?

子ども・子育て支援金」は、少子化対策の財源確保のために2026年度から導入される制度で、公的医療保険に上乗せして国民や企業から徴収されます。この支援金を通じて、育児支援の安定した財源を確保し、以下のような少子化対策を推進することが目的です。

少子化対策の主要な施策

  1. 児童手当の拡充
    • 所得制限を撤廃(2024年12月支給分から)
    • 対象年齢を18歳まで拡大
    • 第3子以降の支給額を月額3万円に増額
  2. 児童扶養手当の強化
    • ひとり親世帯への支援強化
    • 子どもが3人以上いる世帯への加算部分の増額
  3. 妊娠・出産時の支援
    • 妊娠・出産時に10万円相当の給付を実施
    • 子どもが1歳になるまでの間、国民年金保険料を免除
  4. 「こども誰でも通園制度」の導入
    • 親が働いていなくても、3歳未満の子どもを保育所などに預けられる新制度
  5. 育児休業給付の拡充
    • 両親が14日以上の育児休業を取得した場合、最長28日間まで育児休業給付を拡充
    • 給付を増額し、実質的に手取り収入の減少を防止
  6. 新たな時短勤務支援
    • 2歳未満の子どもの親が時短勤務をする場合、賃金の10%を支給する新制度を創設

政府は、2030年までを「少子化対策のラストチャンス」と位置付け、これらの施策を着実に推進したい考えです。

支援金の負担額

「子ども・子育て支援金」は、公的医療保険の加入者全員が対象となります。会社員として社会保険に加入している人だけでなく、フリーランスや自営業者で国民健康保険に加入している人、さらには後期高齢者医療制度に加入する人も対象です。

一人当たりの負担額(見込額)

全医療保険制度の加入者における平均負担額は、以下のように年度ごとに増加する予定です。

  • 2026年度:月額250円
  • 2027年度:月額350円
  • 2028年度以降:月額450円

※保険料は労使折半が原則となっており、企業も同額を負担する必要があります。

「独身税」と呼ばれる理由

「子ども・子育て支援金」は、少子化対策の財源として重要ですが、子育て世帯以外には直接のメリットが少ないため、「独身税」と揶揄されています。特に、以下の点が議論の焦点となっています。

  • 独身者や子どもがいない世帯も負担を求められる。
  • 支援金の使途が主に育児支援であるため、非子育て世帯には恩恵が感じられにくい

これにより、若年層や独身者からの反発が予想され、支援金制度の公平性が課題となっています。

財源確保と今後の課題

政府は、少子化対策に年間3兆6,000億円の財源が必要と見積もっており、その一部を支援金で賄います。しかし、当面は国債での補填を行い、2028年度までに安定的な財源を確保する計画です。

財源の内訳は以下の通りです。

  • 既存予算の活用:1兆5,000億円
  • 歳出改革:1兆1,000億円
  • 子ども・子育て支援金:1兆円

一方、支援金制度を巡っては、負担と恩恵のバランスを巡る批判が続いており、適切な見直しを求める付帯決議が衆参両院で可決されています。

まとめ

「子ども・子育て支援金」は、少子化問題への対応として不可欠な施策ですが、負担の公平性が問われ、「独身税」として批判される可能性もあります。政府は、2026年度からの施行に向け、国民の理解を得つつ、制度の透明性と運用の適正化を進めていく必要があります。

2030年という「ラストチャンス」を前に、少子化対策がどのような成果をもたらし、支援金制度が社会全体にどのような影響を与えるのか、今後の動向が注目されます。

最近の税務調査のポイント

最近の税務調査では、消費税や海外取引、無申告者、シェアリングエコノミーといった分野に対する重点が見られます。これらの分野は国の歳入に大きく関与しているだけでなく、近年の経済・社会環境の変化に伴い、税務調査の焦点が変わってきている部分です。以下で、具体的な税務調査の注目ポイントを解説していきます。

1.消費税が主な調査対象に

2024年度の日本政府の一般会計歳入(当初予算)で約112.6兆円のうち、61.8%にあたる69.6兆円が租税及び印紙収入です。その中でも、消費税は国にとって最も大きな収入源となっており、その割合は34.2%(23.8兆円)に達します。これは、他の税目と比べて非常に高い割合であり、消費税が税務調査において重視される理由のひとつです。

消費税は事業者が消費者から預かった税金を国に納める仕組みであるため、正確な計算と適正な納税が求められます。しかし、意図的な不正や単純なミスにより、適切に消費税を申告していないケースも見受けられます。こうした背景から、税務調査の現場では消費税に関するチェックが厳しく行われる傾向があります。特に、調査官の名刺に「消費税専門官」と書かれている場合、その調査が消費税に焦点を当てたものになることはほぼ確実です。

2.海外取引に関する調査の強化

資産運用の国際化に伴い、税務当局は海外取引に対する調査にも力を入れています。特に、CRS(共通報告基準)という国際的な情報共有制度を活用して、各国の税務当局が金融情報を共有できるようになったことで、海外金融機関を通じた利益の申告漏れがより把握されやすくなっています。

例えば、海外の銀行口座に蓄積されていた多額の利息や配当金が申告されていなかったケースが、租税条約に基づく情報提供要請によって発見されることも増えています。こうした国際的な取引や金融商品の利用が増加する中、税務当局は租税回避を防止するため、より詳細かつグローバルな視点での調査を強化しているのです。

3.無申告者の把握と対策

近年、無申告者に対する税務調査も厳格化しています。特に、インフルエンサーやユーチューバーといったオンラインプラットフォームで収益を上げる人々がターゲットとなるケースが増えています。多額の利益を得ながらも、その所得を申告していないことが発覚する事例が後を絶ちません。

例えば、あるインフルエンサーが多額の広告収入を得ながら申告を怠っていたり、ペットオークションやインターネット上でのビジネスを通じて得た利益を適切に申告していないことが判明するケースもあります。また、相続税の申告が必要であると認識しながらも、税務署からの照会に「申告不要」と虚偽の回答を行うなど、意図的な無申告が問題視されています。

こうした状況に対応するため、税務当局はSNSやインターネット上のデータを活用して、無申告者の特定に努めています。今後も、この分野における調査は一層厳しくなるでしょう。

4.シェアリングエコノミーと税務調査

アフィリエイターや動画配信者といったシェアリングエコノミーに関連する事業者も、税務調査の対象となることが増えています。これらの事業者は、インターネットを介して収益を得るため、納税者の特定や情報の収集が困難なケースも存在してきたところですが、税務当局はこれに対しても着実に対応を進めています。

具体的には、アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)や動画配信プラットフォームなどに対して、税務署が照会を行い、納税者の情報を収集する手法が取られています。このようにして、インターネットを利用した新しい経済活動においても、適正な納税が行われるよう、税務当局は調査の範囲を広げています。

まとめ

このように、税務調査は社会や経済の変化に応じて進化しています。特にデジタル化・国際化が進む現代においては、より精密かつ包括的なアプローチが求められており、事業者や個人は、最新の動向を把握し、適切な対応を心がけることが重要です。

日本の外貨預金と海外預金にかかる税金の違いを解説

外貨預金や海外預金に対する税金について、正しく理解している方は少なく、申告漏れが発生しやすい分野でもあります。今回は、日本国内の外貨預金海外預金における税金の違いを詳しく解説いたします。

まず、日本国内の外貨預金についてです。外貨預金の利息には、源泉徴収税が自動的に課されます。税率は15.315%(所得税)と5%(住民税)の合計20.315%です。このため、利息に関して特別な手続きを行う必要はなく、確定申告も不要となります。

一方で、注意が必要なのが為替差益です。例えば、1ドル=100円のレートで1万ドルを購入し、その後1ドル=120円のレートで売却すると、20万円の為替差益が生じます。この差益は雑所得として確定申告が必要です。通貨が変わることで所得が発生する点は、見落としがちなため、申告漏れが発生しやすい部分です。

また、為替差損が発生した場合は、他の雑所得と損益通算が可能です。これにより、為替差損を申告することで、所得税の軽減が図れる可能性があります。

次に、海外預金に関してです。日本の銀行で発生する預金利息には源泉徴収が適用されるため、申告が不要な場合が多いですが、海外の銀行で発生した預金利息は確定申告を通じて申告しなければなりません。海外で現地の税金が課されていたとしても、日本での申告が必要です。この場合、外国税額控除を適用することで、二重課税を回避することができます。

しかし、すべてのケースで申告が必要というわけではありません。例えば、1か所のみの給与所得者で、給与以外の所得合計が20万円以下の場合、確定申告は不要です。ただし、ふるさと納税や医療費控除などを利用して確定申告を行う場合には、この20万円以下の所得も含めて申告する必要がありますので、注意が必要です。

以上のように、外貨預金や海外預金にかかる税金には、それぞれ異なるルールが適用されます。特に申告漏れが発生しやすい部分ですので、しっかりと確認することが大切です。疑問や不安がある場合は、ぜひ専門家にご相談ください。

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