最近の税務調査のポイント

最近の税務調査では、消費税や海外取引、無申告者、シェアリングエコノミーといった分野に対する重点が見られます。これらの分野は国の歳入に大きく関与しているだけでなく、近年の経済・社会環境の変化に伴い、税務調査の焦点が変わってきている部分です。以下で、具体的な税務調査の注目ポイントを解説していきます。

1.消費税が主な調査対象に

2024年度の日本政府の一般会計歳入(当初予算)で約112.6兆円のうち、61.8%にあたる69.6兆円が租税及び印紙収入です。その中でも、消費税は国にとって最も大きな収入源となっており、その割合は34.2%(23.8兆円)に達します。これは、他の税目と比べて非常に高い割合であり、消費税が税務調査において重視される理由のひとつです。

消費税は事業者が消費者から預かった税金を国に納める仕組みであるため、正確な計算と適正な納税が求められます。しかし、意図的な不正や単純なミスにより、適切に消費税を申告していないケースも見受けられます。こうした背景から、税務調査の現場では消費税に関するチェックが厳しく行われる傾向があります。特に、調査官の名刺に「消費税専門官」と書かれている場合、その調査が消費税に焦点を当てたものになることはほぼ確実です。

2.海外取引に関する調査の強化

資産運用の国際化に伴い、税務当局は海外取引に対する調査にも力を入れています。特に、CRS(共通報告基準)という国際的な情報共有制度を活用して、各国の税務当局が金融情報を共有できるようになったことで、海外金融機関を通じた利益の申告漏れがより把握されやすくなっています。

例えば、海外の銀行口座に蓄積されていた多額の利息や配当金が申告されていなかったケースが、租税条約に基づく情報提供要請によって発見されることも増えています。こうした国際的な取引や金融商品の利用が増加する中、税務当局は租税回避を防止するため、より詳細かつグローバルな視点での調査を強化しているのです。

3.無申告者の把握と対策

近年、無申告者に対する税務調査も厳格化しています。特に、インフルエンサーやユーチューバーといったオンラインプラットフォームで収益を上げる人々がターゲットとなるケースが増えています。多額の利益を得ながらも、その所得を申告していないことが発覚する事例が後を絶ちません。

例えば、あるインフルエンサーが多額の広告収入を得ながら申告を怠っていたり、ペットオークションやインターネット上でのビジネスを通じて得た利益を適切に申告していないことが判明するケースもあります。また、相続税の申告が必要であると認識しながらも、税務署からの照会に「申告不要」と虚偽の回答を行うなど、意図的な無申告が問題視されています。

こうした状況に対応するため、税務当局はSNSやインターネット上のデータを活用して、無申告者の特定に努めています。今後も、この分野における調査は一層厳しくなるでしょう。

4.シェアリングエコノミーと税務調査

アフィリエイターや動画配信者といったシェアリングエコノミーに関連する事業者も、税務調査の対象となることが増えています。これらの事業者は、インターネットを介して収益を得るため、納税者の特定や情報の収集が困難なケースも存在してきたところですが、税務当局はこれに対しても着実に対応を進めています。

具体的には、アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)や動画配信プラットフォームなどに対して、税務署が照会を行い、納税者の情報を収集する手法が取られています。このようにして、インターネットを利用した新しい経済活動においても、適正な納税が行われるよう、税務当局は調査の範囲を広げています。

まとめ

このように、税務調査は社会や経済の変化に応じて進化しています。特にデジタル化・国際化が進む現代においては、より精密かつ包括的なアプローチが求められており、事業者や個人は、最新の動向を把握し、適切な対応を心がけることが重要です。

相続時精算課税制度の見直し(令和5年度税制改正)

令和5年度税制改正により、相続時精算課税制度について、基礎控除110万円の控除が適用されます。

これまでの相続時精算課税制度では、贈与税が非課税となる2,500万円の特別控除額はありましたが、贈与者が死亡したときに、この2,500万円分も含めて相続財産に足し戻されるため、節税効果は期待できない制度でした。
※相続財産が相続税の基礎控除以下である方など相続時に相続税の心配がない方が、年間110万円以上の贈与をしたい場合など、現行の精算課税制度が有効になるケースもあります。

また、一旦、相続時精算課税制度を選択すると、その後同じ贈与者からの贈与については精算課税制度が自動継続されるため、110万円以下の少額の贈与であっても申告する必要がありました。

この点について、令和5年度税制改正で大きく見直しが行われました。

相続時精算課税制度の改正のポイント

・基礎控除額110万円が創設 ⇒ 毎年110万円まで贈与税が非課税となる

・基礎控除額以下の贈与については、暦年課税と同様、申告は不要

・将来、贈与者が死亡した時に、基礎控除額以下の部分は相続財産に含めなくてよい ⇒ 毎年110万円は確実に節税できる

上記の改正は、令和6年1月1日からの贈与について適用されます。

注意点

相続時精算課税制度の適用開始年については、贈与税の申告書の提出期限内に「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

その年の贈与額が基礎控除額以下で贈与税の申告が不要であっても、届出書の提出は必要ですので気を付けましょう。(当該届出書の提出は適用開始年のみ)

令和6年からの贈与は暦年課税と精算課税、どちらが有利?

令和5年度税制改正で生前贈与加算が3年から7年に延長となりましたので、暦年課税制度については7年間は節税効果が期待できなくなりました。そのため、どちらが有利か判断するのは、より高度な判断が必要となりました。

当事務所では、相続税のシミュレーションなども行っていますので、ご興味のある方はご連絡ください。

同族会社の債務免除とみなし贈与

会社にお金を貸している社長が亡くなった場合、その貸付金は相続財産に含まれ、相続税の課税対象となります。

相続税を計算する際、貸付金は原則として額面で評価することになりますので、多額の貸付金を有している場合には、生前に対策が必要です。

その対策の一つして考えられるのが「債権放棄」です。

社長が貸付金を債権放棄すると、貸付金は消滅しますので相続財産は減少します。

ただし、ここで注意しないといけないのが、
① 債務免除を受けた法人側では「債務免除益」が計上される
② 「みなし贈与」が発生するケースがある
という点です。

①については、法人側に債務免除益を吸収できるだけの繰越欠損金があれば、法人税の負担は生じません。

②については、社長本人が会社の株式を100%保有している場合には問題は生じません。
問題となるのは、「同族会社で社長以外の株主がいる場合」かつ「債務免除により株価が上昇する場合」の両方を満たすケースです。

債務免除を受けるとその会社の負債が減少し、純資産が増加します。それでもまだ債務超過である場合には問題となりませんが、純資産がプラスに転じるような場合には、相続税基本通達9-2の規定により、債権放棄をした社長からその他の株主に株価の増加分相当の贈与があったものとみなされ、贈与税が課税されてしまいます。

相続対策で役員借入金を債権放棄する際には、「債務免除を受ける法人側での課税関係」及び「株主側での課税関係」を考慮する必要がありますので、実行する前に税理士等の専門家にご相談されることをお勧めします。

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