先日、令和8年度税制改正大綱が発表されました。
子育て世代として個人的に特に注目しているのが、NISAの拡充です。
NISA(少額投資非課税制度)は、
投資によって得られた利益に税金がかからない制度として、
これまでも国民の資産形成を後押ししてきました。
今回の税制改正では、
従来の「大人の資産形成」を主眼とした制度から一歩進み、
子どもの将来を見据えた長期的な資産形成までを、制度として明確に位置づけた点が、大きな特徴だと感じています。
本記事では、
改正前と改正後を比較しながら、NISA制度がどのように変わるのかを、
できるだけ分かりやすく整理します。
NISAとはどのような制度か
NISAとは、通常であれば約20%の税金がかかる
- 株式や投資信託の値上がり益
- 配当金や分配金
といった投資による利益が非課税となる制度です。
長期・積立・分散投資を促すことで、
国民一人ひとりが将来に備えた資産形成を行えるよう設計されています。
【改正前】これまでのNISAと子ども向け制度の位置づけ
令和7年度までのNISA制度は、
- 対象年齢は原則18歳以上
- 主に老後資金など、大人自身の将来に向けた資産形成を想定
という構成でした。
一方で、子ども向けの制度としては、
2016年に「ジュニアNISA」が創設されましたが、
2023年をもって制度として廃止されています。
その結果、
改正前のNISA制度全体としては、
子どもの将来資金を目的とした恒久的な仕組みが存在しない状態となっていました。
【改正後】令和8年度税制改正によるNISAの主な変更点
① つみたて投資枠の対象年齢を0歳まで拡充
今回の改正により、
2027年(令和9年)から、つみたて投資枠の対象年齢が0歳まで引き下げられます。
これにより、
- 0歳からNISA口座を開設し
- 親が管理する形で
- 長期間にわたり積立投資を行う
ことが可能となります。
ジュニアNISA廃止後に空白となっていた「子どものための資産形成制度」が、
新たな形で制度化されたといえます。
なお、いわゆる「こどもNISA」については、以下のような上限が設けられます。
- 年間投資枠:60万円
- 非課税保有限度額:600万円
これは、
資産の過度な集中や格差の固定化を防ぐ観点からの措置と考えられます。
また、積み立てた資産は、
子どもが12歳以上になり、本人の同意を得なければ引き出すことができない
という制限も設けられます。
従来のジュニアNISAでは、
原則として子どもが18歳になるまで払い出しができず、
使い勝手の面で課題が指摘されていましたが、
今回の改正では、年齢に応じて柔軟性を持たせた制度設計となっています。
② 投資対象の拡充(国内投資の後押し)
改正後は、
- 国内株式を対象とした一定の株価指数
- 地域を限定した株式指数
- 債券の比率が高い投資信託
などが、つみたて投資枠の対象として追加されます。
個人の資産形成を支援すると同時に、
国内経済への資金循環を促す政策的な意図も読み取れます。
改正前後の比較まとめ
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 原則18歳以上 | 0歳以上 |
| 子ども向け制度 | ジュニアNISA(2023年廃止) | 「こどもNISA」として恒久的に位置づけ |
| 想定される目的 | 大人の資産形成中心 | 子どもの将来資金も想定 |
| 投資対象 | 一定の制限あり | 国内投資・債券等が拡充 |
子育て世代の立場から感じること
今回のNISA拡充は、
- 「教育資金は貯金で準備するもの」
- 「投資は大人になってから考えるもの」
といった従来の考え方から、
時間を活かした長期的な資産形成へと発想を広げる改正だと感じます。
もちろん、
投資には価格変動リスクがあり、
すべての家庭にとって必須の制度ではありません。
しかし、
制度を正しく理解した上で
「使う・使わない」を選択できる環境が整ったこと自体に、
大きな意義があると考えています。
おわりに
税制改正は専門的で分かりにくい印象を持たれがちですが、
NISAのように日常生活や子育て、将来設計に直結する改正も少なくありません。
今後も、
子育て世代・生活者の視点から、
税制改正のポイントを分かりやすく整理していきたいと思います。