居住用賃貸建物に係る仕入税額控除

令和2年10⽉1⽇以後の課税仕⼊れ等から、居住⽤賃貸建物に係る仕⼊税額控除の適⽤が制限されています。

仕⼊税額控除の制限対象となる「居住⽤賃貸建物」とは、⾮課税となる住宅の貸付け (消法別表第⼀13号)の⽤に供しないことが明らかな建物以外の建物(⾼額特定資産⼜は 調整対象⾃⼰建設⾼額資産)です。

「住宅の貸付けの⽤に供しないことが明らかな建物」とは、建物の構造及び設備の状況等により住宅の貸付けの⽤に供しないことが客観的に明らかなものが該当します。( 消基通11-7-1 )。

賃貸マンション等を⺠泊サービス事業のために取得した場合、その建物は構造等から判断して住宅ですので「居住⽤賃貸建物」に該当し、仕⼊時に仕⼊税額控除を適⽤できません。

ただし、仕⼊税額控除の制限対象となっても、『調整規定の要件』をすべて満たせば、居住⽤賃 貸建物に係る課税仕⼊れ等の税額のうち⼀定額を第3年度の課税期間の仕⼊控除税額に加算することができます。( 消法35の2 ①、 消令53の2 )

●調整規定の要件
・第3年度の課税期間の末⽇に居住⽤賃貸建物を有していること
・居住⽤賃貸建物の全部⼜は⼀部を、仕⼊れ等の⽇から第3年度の課税期間の末⽇までの間(調整期間)に「課税賃貸⽤」に供すること

「課税賃貸⽤」とは、⾮課税の住宅の貸付け(消法別表第⼀13号) 以外の貸付けの⽤とされています( 消基通12-6-1 )。課税売上が発⽣する⺠泊サービス事業としての貸付けは、⾮課税の住宅の貸付けから除外されるものに当たり「課税賃貸⽤」に該当します。

したがって、民泊サービス事業のために取得した建物は、仕入時に仕入れ税額控除を適用できませんが、第3年度の課税期間の末日までの間に民泊サービス事業として貸付けを行っていれば、第3年度の課税期間の仕入税額に一定額を加算調整することができるということになります。

インボイス制度とETC料金~追加情報~

先日、インボイス制度開始後は、ETC料金のインボイス対応についてご説明しましたが、9月15日、国税庁が「お問い合わせの多い質問」を更新し、柔軟な対応を認める旨を示しましたので、その内容についてご説明したいと思います。

利用証明書は高速道路会社等ごとに任意の1回分のみでOK

「ETC利用照会サービス」に登録し、すべての利用証明書を取得するのは大変手間がかかるという声があがっていました。これを受けて、国税庁は9月15日、インボイス制度に係る「お問合せの多いご質問」を更新し、「利用証明書」のダウンロードについては、利用した高速道路会社等ごとに1回のみで済む柔軟な対応を認める旨を示しました。

なお、空港と内陸部を結ぶ連絡橋の通行料金(空港連絡橋利用税)など、消費税の課税対象とならない金額がある場合、その金額は仕入税額控除の対象外となる旨の記載されておりました。

国税庁HP お問合せの多いご質問(随時更新)

インボイス制度とETC料金

いよいよインボイス制度開始まで半月となりました。

最近、お問い合わせいただくことが多い「ETCの利用料金」について、ご紹介します。

ETCの利用料金については、これまではクレジットカードの利用明細で使用額を確認し、会計処理を行うというのが一般的な方法だったかと思います。

現行の区分記載請求書等保存方式においては、1回当たりの税込取引金額が3万円未満の少額取引の場合や自動販売機から購入する場合など、請求書等の交付を受けられなかったことについてやむを得ない理由があるときについては、帳簿の保存のみで仕入税額控除を行うことができました。(旧消法30⑦、旧消令49①)

しかし、10月からのインボイス制度開始後は、この少額取引の場合や請求書等の交付を受けることが困難な場合に請求書等の保存が不要となる制度が廃止されます。少額な公共交通機関の運賃など一部の例外を除き、例え100円の消耗品の購入であっても、インボイスの保存が必要となります。

これは、ETCの利用料金についても同様です。今後はクレジットカードの利用明細だけでは、原則、仕入税額控除を行うことができません。(クレジットカードの利用明細は、インボイスには該当しないためです)

今後は、ETCの利用料金について仕入税額控除を行うためには、「ETC利用紹介サービス」から利用証明書(これがインボイスにあたります)をダウンロードし、これを保存する必要があります。

ただし、例外もあります。

基準期間の課税売上高1億円以下の中小事業者などについては、税込1万円未満の少額取引については、帳簿の保存のみで仕入税額控除を適用することができる経過措置がありますので、当面の間は、帳簿に記載するだけで仕入税額控除が受けられます。

インボイス制度、複雑ですね。

ご心配な方は、当事務所までご相談ください。

役員退職給与

平成29年税制改正後は、役員退職給与は「業績連動の役員退職給与」か「業績連動でない役員退職給与」かにより取り扱いが変わりました。

業績連動の役員退職給与の場合、業績連動給与としての損金算入要件を満たしてはじめて損金算入されます。中小企業の場合、業績連動給与の要件(有価証券報告書を提出していることなど)を満たせないため、業績連動の役員退職給与に該当しないようにしなければなりません。

なお、功績倍率法に基づいて支給する退職給与は法人税基本通達9-2-27の3により業績連動給与に該当しない旨が示されています。

(参考)法人税基本通達9-2-27の2 業績連動給与に該当しない退職給与

ただし、功績倍率法による場合でも、業績連動の要素が強い場合には、業績連動給与に該当するケースもあり得ますので注意が必要です。

法人税基本通達逐条解説(抜粋)
仮に法人が用いている「功績倍率」が業績連動給与に該当することとなる利益の 状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標等を基礎として算定されるも のである場合、業績連動給与に該当するケースも考えられる。

フードドライブ

今日、区役所に行く用事があったので、フードドライブの窓口に自宅で余っている食材の持ち込みをしてきました。

・賞味期限、消費期限が4カ月以上かつ未開封のものに限る
・お米は、精米日から1年以内で未開封のものに限る
・包装、外装破損品不可
・生鮮食品、冷凍・冷蔵食品不可
・アルコール類不可

上記のような厳しい条件があるので、選別した結果、持ち込みができるものは数点だけでしたが、それでも捨てるよりは良いかなと思い、行ってきました。

フードドライブの窓口は、品川区役所本庁舎6階環境課と書かれていたので行ってみると、特別の窓口はなく、ポスターが貼ってあるだけでした。

近くにいらっしゃった職員さんに声を掛けると、担当者の方が出てきてくださり、無事にお渡しすることができました。

また余った食材があったら、持っていきたいと思います。(余らせないようにするのが一番良いと思うので、気を付けます。)

相続時精算課税制度の見直し(令和5年度税制改正)

令和5年度税制改正により、相続時精算課税制度について、基礎控除110万円の控除が適用されます。

これまでの相続時精算課税制度では、贈与税が非課税となる2,500万円の特別控除額はありましたが、贈与者が死亡したときに、この2,500万円分も含めて相続財産に足し戻されるため、節税効果は期待できない制度でした。
※相続財産が相続税の基礎控除以下である方など相続時に相続税の心配がない方が、年間110万円以上の贈与をしたい場合など、現行の精算課税制度が有効になるケースもあります。

また、一旦、相続時精算課税制度を選択すると、その後同じ贈与者からの贈与については精算課税制度が自動継続されるため、110万円以下の少額の贈与であっても申告する必要がありました。

この点について、令和5年度税制改正で大きく見直しが行われました。

相続時精算課税制度の改正のポイント

・基礎控除額110万円が創設 ⇒ 毎年110万円まで贈与税が非課税となる

・基礎控除額以下の贈与については、暦年課税と同様、申告は不要

・将来、贈与者が死亡した時に、基礎控除額以下の部分は相続財産に含めなくてよい ⇒ 毎年110万円は確実に節税できる

上記の改正は、令和6年1月1日からの贈与について適用されます。

注意点

相続時精算課税制度の適用開始年については、贈与税の申告書の提出期限内に「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

その年の贈与額が基礎控除額以下で贈与税の申告が不要であっても、届出書の提出は必要ですので気を付けましょう。(当該届出書の提出は適用開始年のみ)

令和6年からの贈与は暦年課税と精算課税、どちらが有利?

令和5年度税制改正で生前贈与加算が3年から7年に延長となりましたので、暦年課税制度については7年間は節税効果が期待できなくなりました。そのため、どちらが有利か判断するのは、より高度な判断が必要となりました。

当事務所では、相続税のシミュレーションなども行っていますので、ご興味のある方はご連絡ください。

夏季休業のお知らせ

誠に恐れ入りますが、8月14日(月)~18日(金)は夏季休業となります。

お問い合わせへのご返信が遅くなる場合がございますので、ご了承ください。

連日の猛暑でご体調崩されませんよう、みなさまご自愛ください。

小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)

令和5年度税制改正により、免税事業者がインボイス発行事業者を選択した場合の負担軽減を図るため、消費税の納税額を売上税額の2割に軽減する激変緩和措置が3年間設けられています。

この経過措置(以下、「2割特例」といいます。)は、事前の届出が不要であり、申告時に選択適用できます。業種にかかわらず、売上・収入を把握するだけで消費税の申告が可能となることから、簡易課税に比べても、事務負担が大幅に軽減されることになります。

1. 適用期間

「2割特例」の適用期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となります。

例えば、個人事業者が令和5年10月1日に登録した場合、令和5年分から令和8年分までの4年分の確定申告が対象となります。

2. 適用対象者

「2割特例」は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった者が対象です。

そして、その適用の可否は課税期間ごとに判断しなければなりません。

「2割特例」は、インボイス発行事業者の登録がなかったとしたならば、消費税を納める義務が免除されることとなる課税期間を対象としています。

したがって、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える課税期間や消費税法に規定する納税義務の免除の特例により課税事業者となる課税期間については適用することはできません。(平成28年改正法附則51の2①)

また、課税期間を1カ月又は3カ月に短縮する特例の適用を受ける場合についても、「2割特例」の適用はありません。

簡易課税制度の届出特例

簡易課税制度を適用したい場合には、原則として、簡易課税制度選択届出書をその適用を受ける課税期間の直前の課税期間の末日までに提出する必要があります。(消法37①)

ただし、インボイス制度導入に伴い、この届出書の提出時期について2つの特例措置が設けられています。

1. 免税事業者に係る登録の経過措置の適用を受ける場合の特例

免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に「免税事業者に係る登録の経過措置」の適用を受ける場合には、登録開始日を含む課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出すれば、その登録開始日を含む課税期間から簡易課税制度を適用できます。(平成30年改正消令附則18)

この場合、その提出する簡易課税制度選択届出書に「その課税期間から簡易課税制度を適用する旨」の記載が必要となります。具体的には、簡易課税選択届出書の「①適用開始課税期間」欄のすぐ上の欄にある□に✓マークを付けて提出します。

なお、その基準期間における課税売上高が1,000万円を超えたこと等により課税事業者となる免税事業者が、その課税事業者となる課税期間の初日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、「免税事業者に係る登録の経過措置」が適用されませんので、この場合には、原則通り、その直前の課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出する必要がありますので注意が必要です。

2. 2割特例を適用した課税期間後の特例

2割特例(2割特例について後日ご説明します)の適用を受けた適格請求書発行発行事業者が、2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、消費税簡易課税制度選択届出書を提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます(平成28年改正法附則51の2⑥)

この場合、その提出する届出書に、「その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨」を記載する必要があります。具体的な記載方法は上記1の場合と同じです。

(参考)国税庁HP 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要

適格請求書発行事業者の登録と納税義務の関係

インボイスを発行するためには、納税地を所轄する税務署長に対して「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、適格請求書発行事業者として登録を受ける必要があります。

免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、原則として、課税事業者を選択したうえで登録申請を行う必要がありますが、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、「免税事業者に係る適格請求書発行事業者の登録申請に関する経過措置」により、課税事業者の選択手続き(「課税事業者選択届出書」の提出)が不要となります。(インボイス通達5-1)

また、令和4年度改正により、免税事業者は、令和5年10月1日の属する課税期間の翌課税期間以後、令和11年9月30日の属する課税期間までは、課税期間の途中でも登録を受けた日から適格請求書発行事業者となることができるようになりました。(もともとは、令和5年10月1日の属する課税期間のみでした)

ただし、ここで注意したいのが、令和5年10月1日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者となった場合と令和5年10月1日の属する課税期間の翌課税期間以後に適格請求書発行事業者となった場合とでは、課税事業者として拘束される期間の有無が異なるということです。

・令和5年10月1日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者となった場合
  ⇒課税事業者として拘束される期間なし

・令和5年10月1日の属する課税期間の翌課税期間以後に適格請求書発行事業者となった場合
  ⇒登録日から2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、
   納税義務は免除されない

この取り扱いの違いは、令和4年度改正により延長された期間については、課税事業者選択届出書を提出することで課税転換した場合とのバランスを考慮されたことによるものです。

ややこしいですね。

さらにここに、「課税事業者を選択した事業者が調整対象固定資産を取得した場合の納税義務に係る免除の特例」(消法9⑦)と「高額特定資産を取得した場合の納税義務に係る免除の特例」(消法12の4①)などが絡むと、さらに複雑さを増します。

判断を誤る税理士が多発するのではないのでしょうか。。。

私は、判断を誤ることのないように、日々、勉強しております。
ご興味のある方、ご連絡ください。

(参考)平成28年改正法附則44⑤
前項の規定の適⽤を受ける事業者の登録開始⽇の属する課税期間の翌課税期間から 登録開始⽇以後2年を経過する⽇の属する課税期間までの各課税期間(その基準期間にお ける課税売上⾼が1,000万円を超える課税期間及び消費税法第9条第4項の規定による届出書の提出により、⼜は同法第9条の2第1項、第10条第2項、第11条第2項若しくは第4項、 第12条第2項から第4項まで若しくは第6項、第12条の2第1項若しくは第2項、第12条の3 第1項若しくは第3項若しくは第12条の4第1項若しくは第2項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間を除く。)における課税資産の譲渡等及び特定課税仕⼊れについては、同法第9条第1項本⽂の規定は、適⽤しない。ただし、登録開始⽇の属する課税期間が5年施⾏⽇を含む課税期間である場合は、この限りでない。

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