― 納税義務の判定・届出関係の落とし穴 ―
個人事業者の消費税申告においては、
「そもそも課税事業者に該当するかどうか」の判定段階で誤りが生じているケースが少なくありません。
今回は、納税義務の判定や各種届出に関する”誤りやすいポイント”を中心に解説します。
1.納税義務者に該当するかの基本整理
次のいずれかに該当する場合、消費税の確定申告が必要となります。
- 適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)である
- 基準期間(原則2年前)の課税売上高が1,000万円を超える
- 特定期間(前年1~6月)の課税売上高と給与等支払額がいずれも1,000万円を超える
- 消費税課税事業者選択届出書を提出している
- 相続があった場合の納税義務の免除の特例に該当する
この「どれか1つに該当すれば課税事業者になる」という点が、まず重要です。
2.【誤りやすい事例①】免税事業者の売上を「税抜」で判定してしまう
免税事業者だった年の売上を、
「110分の100(または108分の100)」で割り戻して課税売上高を計算しているケース
これは誤りです。
免税事業者の売上には、そもそも消費税が含まれていません。
そのため、受け取った金額の全額が課税売上高となります。
✔ 「税込・税抜」の考え方は、課税事業者になってからの話
✔ 納税義務判定では「受け取った金額そのもの」で判定
3.【誤りやすい事例②】事業用資産の売却を課税売上高に含めていない
基準期間の課税売上高を計算する際に、
- 事業用の建物
- 機械・設備
- 事業用車両
などの売却代金を除外しているケースが散見されます。
これらはすべて
👉 「課税資産の譲渡」
👉 課税売上高に含める必要があります
一時的な売却であっても、判定には影響しますので注意が必要です。
4.【誤りやすい事例③】課税事業者選択届の効力を誤解している
よくある誤解
- 「一度売上が1,000万円を超えたら、選択届の効力はなくなる」
これは誤りです。
✔ 課税事業者選択届は
👉 「不適用届出書」を提出しない限り効力は存続します
5.相続があった場合の注意点
被相続人が提出していた
「消費税課税事業者選択届出書」の効力は、相続人には及びません。
相続により事業を承継した場合には、
- 相続があった場合の納税義務の判定
- 必要に応じて届出書の提出
が必要となります。